男を磨く旅 (6) 危機回避?の章

(2002/08/06) 執筆


話はUCBのキャンパスを訪れる前にさかのぼる。
バークレーには早めに着いたので、その日泊まるモーテルは
いろいろ回って比較検討して決めることにした。
ここ数日、チェーン系の小奇麗なモーテルばかりで面白みがなかったので
2日目のような少しサビれたところがいいなと思い探してみる。


一軒目。色使いも悪く、いかにも安モーテルといった感じのところへ。
オヤジに値段を聞いた後、他もあたってみるべく車に向かおうとした瞬間

   「アナタハ ニホンジン?」

不意な日本語だったので少し驚いた。

   「ユー フロム キョート」

ちょうどその時京大Tシャツを着ていてそれをオヤジに見られたのだ。

   「俺は25年ぐらい前に京都に住んでいたんだぜ」

みたいなことを言ってくるオヤジ。何故かうれしくなった俺は

   「気に入ったぜ、オヤジ。今日はここに泊まることにするよ。」

みたいな感じのことを言い、結局一軒目にチェックインしたのだった。
この安モーテル、宿泊者はいかにも低所得者層といった感じだ。
昼間から駐車場で酒など飲んでおり、猥雑な声が聞こえてくる。
なんか、雰囲気のあるところやんけ


で、その後、UCBのキャンパスへ行ったのだ(UCBの章)。
そして、何故かわからんが「この街は危険だ!」と感じた俺は
明るい内にこのモーテルに帰ってきたのだった。駐車場には奴らがまだいる。
な、なんかすごく見られている気がする・・・


部屋に入りシャワーを浴びながら考える・・・。
汚い部屋。やばい色使い。ひび割れた窓ガラス。
道路のゴミ。駐車場の奴ら。猥雑な声。視線。
・・・奴らは本当に宿泊者なのか?
そして何より・・・カタコトの日本語を話すオヤジ・・・。


        やばいかも


そう感じた俺はシャワーから出ると速攻で荷物をまとめて逃げた
鍵は部屋に置きっ放しにしておいた。(部屋代は先払いである)
この旅でもっともエキサイティングな瞬間であった。
で、他のきっちりしたモーテルに泊まったのだった。


あのまま居たら、どうなってたか今となってはわからん。
たぶん、たぶんだが、何もなかったに違いない。
ただの「疑心暗鬼」だ。・・・とは思うが、やっぱりわからん。
命を獲られることはなくても、車を荒らされることは十分考えられる。
何より俺の第六感が「ここはやめとけ!」と叫んだのだ。
俺が信じるのは俺様の直感だけだ。
これまでそうやって生きてきたので、今回もそうした。
無駄に払った部屋代は、まあ勉強代だ。
しかし、俺は疲れていたのか?
普段、割と安全な所にしかいないので感覚が鈍ったのだろうか・・・


    ここは日本じゃない。アメリカなのだ。


              (つづく)