高橋教授

(2002/10/25) 執筆

UCLAは「研究所」ではなく「大学」なので、毎日そこらじゅうで授業が
行われているはずである。もぐりこもうと思ったら可能だろう(たぶん)。
そんなことせんでも、一般に公開されたセミナーに参加するという手もある。
勉強したい人なら誰でも機会を得ることができる場所、それが「大学」なのである。


「何かおもしろイベントはないのか?」と思いながら、
UCLAホームページの「EVENT」という項目を見ていた時、

 "Japanese Studies Lecture" by Prof. Takahashi
 「Contemporary Culture and Fiction in Japan」
       
(free and open to public)


というのを発見した俺は、それが日本語で行われるということもあり
「久しぶりにオベンキョーでもしてみるか」と軽い気持ちで行ってみたのだ。
場所は Royce Hall (UCLA随一の由緒ある建物。ライブ映像のやつ)
の中の小さい教室で既に20人ほどが集まっていた。
で、特別講演開始。だが、開始早々


俺は凍りついた・・・・


それは、本日のスピーカーが紹介され、壇上に立った時だった。


あ、あれ? あの人、どっかで見たことあるで・・・
って・・・お前・・・「競馬のおじさん」やんけ・・・
こんなとこで何してんねん? はやくどきなさい、じゃまだ。
俺は「スポーツうるぐす」見にきたわけとちゃうで。
はやく、東京に帰って、江川の横にでもすわりや・・・
ん?・・・あ、あれ?
プ、プロフェッサー・タカハシって・・・も、もしかして・・・


     高橋源一郎!?


・・・・・俺は知らなかった・・・・・・・・。
「高橋源一郎=ただの競馬評論家」と思っていたのだ。
実は「作家」でどっかの大学の教授(Professor)だったとは・・・。
つい数日前に「遠山の金さん」の話を書いたばかりだが、
まさか自分がお白洲の悪徳商人の気分を味わうとは思いもよらず。
そんなこんなで、一人笑いを抑えるのに必死だった。


参加者たちもすげぇ真面目。メモとかびっしりとってるし・・・。
これは文学研究科のセミナーの一環だったのだろう。
作家・高橋源一郎の著作とか当然読んできてるみたいだったし。
俺のみ「半笑い」
話の内容もめっちゃ真面目。日本の文学の100年の話とか、
それが変わってきてるとか、その謎解きとか・・・・。
日本語でしゃべってくれてるのに訳がわからん。
横の学生とおぼしき黒人女性の方がよほど話を理解していただろう。
つーか、それまで「競馬のおじさん」と思ってた人が
すげえ真面目な話をするんだから、それだけで笑けてきて仕方がない。


一通り話が終わって、「なにか質問は?」と司会の人が言った時、
日本人学生だけでなく、外国人学生たちもたどたどしいながらも
果敢に日本語で質問とかしていた。
それも「あの作品は〜」とか超真面目で難しい質問。
かたや、俺はというと、


    次の天皇賞の予想は?


と聞きたくて仕方がない衝動を抑えるのに必死だったのだ。
抑えれば抑えるほど、笑いがこみ上げてきて困った。
こんなことを考えていたのはあの教室で俺だけだったろう。
もし、この質問してたら、一瞬で会場が凍りついたんやろうなあ・・・


また、機会をみつけては「公開レクチャー」にでてみようと思う。
ここはUCLA・・・市民に開かれた総合大学なのだ。


END