rubyには関数がなく,全てメソッドであると説明した.ただし,メ ソッドには種類があって,実際はもうちょっと複雑である.このメ ソッドの種類は「アクセス制御」とも呼ばれて,メソッドの呼び出 し方の制限になっている.
まず,トップレベルで関数(メソッド)を定義してみよう.
ruby> def sqr(n) ruby| n * n ruby| end nil ruby> sqr(5) 25
クラスの外側のdefはObjectクラスにメソッドを追加することにな る.全てのクラスはObjectクラスを継承しているから,全てのクラ スでsqrが呼び出せるようになったわけだ.
では,全てのクラスからsqrが呼べるはずなので,sqrをselfに対し て呼び出してみよう.
ruby> self.sqr(5) ERR: private method `sqr' called for main(Object)
エラーになった.話が違う.
実はトップレベル(classの外側)で定義されたメソッドは,関数形 式でしか呼び出せないようになっているのだ.これは「関数のよう に見えるものは関数のように振舞わせよう」というポリシーからだ.
だから,未定義のメソッドを呼び出した時とはエラーメッセージが 違っている.
ruby> undefined_method(13) ERR: undefined method `undefined_method' for main(Object)
`undefined'ではなく,`private'であるというわけだ.逆に classの中で定義されたメソッドはデフォルトのままでは自由に呼 び出せる.
ruby> class Test ruby| def foo ruby| print "foo\n" ruby| end ruby| def bar ruby| print "bar -> " ruby| foo ruby| end ruby| end nil ruby> test = Test.new #<Test:0xbae88> ruby> test.foo foo nil ruby> test.bar bar -> foo nil
`bar'というメソッドの中では`foo'を関数形式で呼び出している.
もし,あるメソッドが関数形式でしか呼び出されないとしたら,そ のメソッドを定義したクラスか,そのサブクラスのメソッドからし か呼ばれないので,C++のprotectedのような働きをするだろう.つ まり,外側から勝手に呼ばれないメソッドになるわけだ.
メソッドの性質を変えるにはprivate, publicというメソッドを使 う.使い方を見てみよう.
ruby> class Test2 ruby| def foo ruby| print "foo\n" ruby| end ruby| private :foo ruby| def bar ruby| print "bar -> " ruby| foo ruby| end ruby| end nil ruby> test2 = Test2.new #<Test2:0xbb440> ruby> test2.foo ERR: private method `foo' called for #<Test2:0x8a658>(Test2) ruby> test2.bar bar -> foo nil
`private :foo'という行を加えたので,メソッドfooを`test.foo' という形では呼び出せなくなったのが分かるだろう.逆に一度 privateになったメソッドをどの形式でも呼び出せるようにするた めには,`public :メソッド名'とする.メソッド名を指定する時には, メソッド名の前の`:'を忘れてはいけない.忘れるとメソッド 名ではなく,ローカル変数の参照と見なされて,いろいろとややこ しいエラーになる.
privateなメソッドはいわゆる関数と同じような働きをする.ただ し,やはりメソッドなので,クラスが違えば同じ名前を使ってもよ いところが違うところだ.