その車中、18切符で乗れる電車を携帯版時刻表で調べると、もうこの時間では串本(潮岬のあるところ)に着くのが午後の6時になってしまうことが判明。これでは、串本駅から潮岬へのバスがなくなってしまうため、仕方なく途中の和歌山から紀伊田辺までを特急で飛ばすことにした。朝寝坊の代償は特急料金と乗車券代計2560円の出費。特急車内で買った柿の葉寿司を食べ、車窓から海を眺め、乗ってから1時間ほどして紀伊田辺で特急を降りてからはまた各駅停車で串本を目指す。
串本駅に着いたのは午後2時半頃。程なくして潮岬行きのバスがやってきた。それに乗って潮岬へ向かう。バスは小さめのものだったが、海岸沿いの大きい道路を走るのではなくて、島の生活道路を突っ切って坂を上り下りするため、このサイズでないと道を通れないのだ。そして終点の潮岬に到着。
そこにあったのは潮岬の観光タワー。道路を挟んで向かい側には芝生が広がり、その奥に本州最南端の地点がある。まずは本州最南端の地点へ向かって歩く。が、直射日光が差してくるため非常に暑い。
展望台の手前には、「本州最南端」の碑があり、展望台には売店があった。展望台から海を眺めると、本当にきれいな海岸線が広がる。なんとなく地球が丸いことがわかるような気がする。だが、1つ気になることが出てきた。ここから見える岩場は、ここと陸続きになっているのだろうか。もしそうなら、今私がいるところは本州最南端ではないのではなかろうか。本当の本州最南端を目指そうかとも思ったが、暑さもあって、下の岩場に降りる方法を探すのを断念し、バス停のある観光タワーに向かった。
観光タワーの入場料を払うと本州最南端到達証明書をもらった。それを持ってエレベータを上り、屋上からの展望を楽しんだ。風が気持ちいいが、太陽の光は暑い。観望を終え、エレベータを降りて売店へ行き、先ほどもらった証明書にスタンプを押した。だが、日付のスタンプがない。芝生の先の、本州最南端の売店に日付のスタンプがあることを思い出し、再び炎天下の芝生を歩かなければいけないのか、と考え気が重くなるが、せっかくここに来たのでもう一度行くことにした。
売店で隣の大島名物というキンカンの飲み物を飲んでいると、マウンテンバイクに乗った若い男の人が観光タワーにやってきた。思わず彼を去年の私の姿を重ね合わせる。彼はそのまま道路むかいの芝生を歩いていったので、その隙に自転車に書いてある住所を見ると、京都市伏見区と書いてあった。なんと!
私ももう一度芝生を歩き、展望台売店で日付のスタンプを押し、今度は潮岬灯台に向かった。
観光タワーからすぐのところに今日泊まるユースホステルを確認。その先に潮岬灯台がある。灯台に着いたのは午後の4時10分、中に入れるのは午後の4時までであったが、普通に中に入れてもらえた。中の螺旋階段を上がって外に出ると、風がとても気持ちいい。そして、外から見える景色も気持ちいい。東のほうを見ると、小さな漁港がある。どうやらこの漁港には降りられるようだ。灯台を降りたら行ってみよう。
灯台を降りて、下にある資料館を見ていると、あることを思い出した。灯台では、船舶用に1700kHzあたりのAM電波で気象・海象情報を流しているのである。そのアンテナはどこか、探してみたら、灯台から近くの小屋のそばにある電柱の間にワイヤーアンテナを発見。その放送を聴いてみようとしたのだが、私の持ってきたポケットラジオでは残念ながら聞くことができない。こうして潮岬灯台を後にした。
まだ多少時間があったので、灯台から見えた港に行くことにした(道は灯台に来る途中で見つけた)。坂を下りて港に入ると、1人の女の人が海を眺めている。私が「こちらに旅行に来たのですか」と彼女に声をかけ、いろいろと話をした。彼女(以下、Sさん)は社会人で、休みを取ってここに来たらしく、しかも彼女も今日私が泊まるユースに泊まることが判明した。波しぶきの写真を撮ってから、一緒にユースに向かった。
ユースホステルに着くと、なんと先ほど観光タワーで見かけた自転車を再び見かけた。先ほど観光タワー前では声をかけることができなかったが、こうして自転車乗り(以下、N君)と話すチャンスが再来したのだ。しかもその彼と部屋が一緒。部屋でいろいろと話を聞いていると、京都からここまでずっと自転車で来たわけではなく、和歌山まで電車で移動し、和歌山からは自転車で2日かけてここまで来たのだそうな。私もそんなポタリング(電車に分解可能な自転車を載せ、駅で組み立てて走ること)の旅をしてみたいものである。明日どこに行くか、目的地はどこか、など、少し話してから、彼はシャワーを入りに行った。
夕食を食べてから夕日を見に行こうとしたのだが、なかなか夕食が出てこないので、先に夕日を見に行くことにした。Sさんを少し前で見かけたので、彼女に合流し、灯台が見える道沿いの公園に行った。その公園にはやはり写真愛好家がたくさんいて、灯台に沈む夕日を撮っていた。私は手持ちのデジカメで撮影。そして、彼女はカメラを忘れたのでカメラを取りにユースに行った。しばらくするとN君と一緒に戻ってきたので、3人でおしゃべりしながら夕日を撮影し、鑑賞した。
やがて日が沈み、3人でユースに戻り、ユースの前で雑談。このときにN君の自転車を間近で見せてもらった。荷台にR大のシールを発見。どうやら彼は伏見区から北区まで自転車で通う自宅生らしい。しばし話しているうちに夕食ができ、建物の中に入り夕食を食べる。
夕食後、後から来た年配のおじさんと4人で屋上で涼む。途中で私は入浴に行き、風呂を出てから外でN君と話をしていると、今度は私よりちょっと年上らしいの男の人(以下、Nさん)が来ていた。彼は研修医1年目で、休みが取れたので車でドライブしてここに来たらしい。しばらく彼と話をしていたが、彼は電話をしなければいけないらしく、ここでは電波が入らないため、電話をしに出かけていってしまった。
それから、N君、Sさんと、3人で屋上で今度は酒を飲んだ。話をしているうちに、彼女がまだ本州最南端の展望台に行っていないことがわかり、男2人で彼女を展望台に連れて行った。夜になって、今度は漁船が明かりをつけて漁をしていたようだ。彼女は夜の海の景色と波音に感動していたようだ。こうしてしばらく波の音に聞きほれ、我々はまたユースの屋上に戻った。
しばらくすると、今度はNさんが屋上にやってきた。ここで酒を追加。彼も展望台を知らなかったらしく、今度は4人でまた展望台へ。展望台では彼の携帯の電波が入るらしく、彼はしばし電話をしていた。戻る途中、芝生の中にある丘でも彼は携帯で電話をはじめ、我々は蚊に刺されながら彼の電話を待った。やがて彼の電話が終わり、ユースの屋上へ。少し4人で話していると、いつの間にか遅い時間になっていたので、明日の日の出を見に行く約束をして、床に就いた。
4人とも今日会ったばっかりなのに、いつの間にか仲良くなっていた。と、Sさんが言っていたが、実際、これがあるから、ユースは楽しい、と思う。