プラズモイド (Plasmoid)

プラズモイドの構造


 プラズモイドは地球の半径30倍程度の所に発生する夜側磁気圏の加速領域で生成され、惑星間空間に吹き出す高温・高速のプラズマの塊です。下に、GEOTAIL が磁気圏尾部(地球の半径の50程の距離)で、プラズマ粒子計測器および磁場計測器によって観測したプラズモイドの例を示します。電子( 60 eV < E < 38keV) とイオン(32eV < E < 40 keV)のエネルギー束のスペクトル、および磁場の南北成分 Bz が表示されています。 初期に、Bz が極く僅かながら正の値を示していますが、プラズモイドの通過に伴い、大きく正に振れて、次に負に変化しています。これは、プラズモイドに伴う磁力線がループ状の構造をしているからであると考えられます。電子やイオンによって、プラズモイドの到着を知る時は、この例の様に、エネルギーの高い電子が先に現れ、短時間で、そのエネルギーが減少する構造(エネルギー分散構造)がみられます。僅かに遅れて観測されるイオンに関しても同様のエネルギー分散構造が見られます。これは、プラズモイドが、高速のイオンビームの層と、さらに外側にまで広がった高速電子の層によって、すっぽりと包まれている事を示唆しています。また、プラズモイドを取り巻く層の中で、エネルギーの低いイオン( E < 0.1keV) が、プラズモイドの内部に入っていくに従ってエネルギーを上昇させています、これは、プラズモイドの境界でローブの粒子が何らかの加速を受けている事を示しています。
 一方、プラズモイド本体は、内部が高温の電子とイオンで満たされています。密度は 1 cm-3 あたり0.1個 で周囲のローブ領域よりも低下しています。その様な構造が、上の図に描かれている様に、平均流速 ~ 700 km/秒の高速度で地球と反対方向に運動しています。注目すべき点は、プラズモイドの内部が周囲よりも密度が低くなっているため、プラズマ物理の用語で『スローショック』と呼ぶ構造が安定に作られる条件を満たしていない事です。プラズモイドの境界が、何と呼ぶべき構造なのか、また、どの様な機構で、ローブからやって来る粒子が加速されるのか、この点を明らかにする必要があります。
 ここでは、簡単のために、プラズモイドがループ状の磁場構造を持っているとしました。それは、いわば、プラズモイドの内部に、輪の形をした閉じた多数の磁力線が詰まっている姿を想定したのですが、実際には、磁場の東西方向の成分がゼロでない値をもつため、磁力線がコイルの様な螺旋形をしていて、両端が外の世界につながっている状況も予想されます。問題となる磁場の東西成分が、どの様にして作られるのか、また、本当にプラズモイドが磁力線を介して外の世界につなっがっているのかという点も重要で、現在、研究が進められています。
 プラズモイドは、地球の磁気圏に過剰に蓄積された質量やエネルギーを外の世界に持ち去る上で重要な役割を果たしています。もともとは、太陽風を源とするエネルギーですが、この様な形で磁気圏全体で大規模な変化を起こしてエネルギー解放を行っています。

プラズモイドの観測例

前のページに戻る