俺様、プロレスを観に行く

(2002/09/23) 執筆

プロレスはスポーツエンターテイメントである。
技で魅せる団体もあるが、多かれ少なかれショー的要素はどんな団体にもある。
最もショー的要素を取り入れているのがアメリカ・プロレスで、
その代表が WWE(World Wrestling Entertainment) という団体の興行である。


   ・・・スターがヒール(悪役)を華麗な技で追い詰めている。
   大勢は決した。あとは時間の問題だ。さあ決めてくれ!
   と、そこへ、どこから現れたのか突如ヒールの参謀が乱入。
   ちょっかいを出され激怒するスター、その参謀に詰め寄る。
   ああ、敵はそっちじゃないよ・・・
   ほら、言わんこっちゃない・・・そんなことをしている内に
   ヒールが息を吹き返してしまったじゃないか・・・
   参謀と争っているスターの背後にゆっくりと忍び寄るヒール・・・
   いつの間にかその手にはパイプイスが・・・

              あ、危ない!

   観客が一斉に騒ぎ立てる・・・頼む、気付いてくれ・・・。それはまさに

           志村!うしろ!!

   である。が、観客の祈りも虚しくパイプイスで叩きのめされるスター。
   会場はブーイングの嵐。卑劣な行為に怒りは頂点に。
   フラストレーションがピークになった時、ついにスターの必殺技が炸裂。
   待ってましたの水戸黄門の印籠。
   それを喰らったらもう立ち上がることはできない。
   1・2・3の完璧なフォール。これまで悪が栄えた試しはないのだ・・・


これはプロレスの最もわかりやすい例の一つである。
ただ毎回そんなに単純ではない。悪が勝つ場合もある。
そうやっていろんな伏線や因縁を作り出していくのである。
裏切りや同盟、離合集散・・・レスラーだけでなく、オーナー自らが、
そして時には家族すら巻き込んでストーリを形成していく。
まさに大河ドラマである。鍛えられた肉体同士のぶつかり合い、
魅力的なスーパースターの華麗な技に加えてストーリーをも楽しむのである。


未だに「プロレスはやらせだ云々」と言う人がいるが、それは
「映画やミュージカルはやらせだ」と言うのと同じくらい愚かな発言である。
そういう人はドリフを楽しめない人であり、水戸黄門にいちいちツッコム人である。
俺は川口浩探検隊を見ても楽しめる自信がある。


着地点とだいたいの流れは決まっているとしても、後はレスラー同士のアドリブだ。
流れるように、且つ客に受けるように、しかも一発本番で決めなければならない。
のろまで頭が悪い人にはできない。少なくともトップレスラーと呼ばれる人たちは、
その技術の高さに加えて、頭の回転もすこぶるいいと俺は思っている。
俺は頭のいい人が好きなのだ。


研究者に必要なのは解析力だけじゃない。
テーマを考える独創力、プレゼンのスピーチ力、論文を書く文筆力、
(後は締め切りに間に合わせる計画力とか・・・)いろんなセンスが要求される。
それらがあって「解析者」ではなく「研究者」を名乗れるのだと思う。
それと同じで、レスラーもただレスリングができるだけではダメ。
技やセリフを考える独創力、試合中のとっさの判断力、客を引き込むスピーチ力
それらがあって初めてプロレスラーとなれるのだと俺は思う。


思わず熱く語ってしまったが、そんなWWEの興行に俺は行ってきたのだ。
いろんな伏線・因縁が作られた後、ひと月に一回、大会が開催される。
それをPPV (Pay Per View)特番という。テレビで見る場合も
見たい人はお金を支払わなければ見れないという仕組みである。
この9月のPPV大会が運良くLAで開催されると知った俺は
チケットを入手し会場で生観戦したのだ。もう何も言うことはない。


    息子を肩車してプロレス観戦


・・・・・俺の目標だ。
「祇園の帝王」よりは実現可能性は高いだろう。


END